漫画アプリ市場が熱狂している。モバイルデータプロバイダのApp annieのデータでは上位漫画アプリのダウンロード数は三月から急増し、一月日で70%も増加している。電子コミックが浸透していく中、新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛が追い風となった。
漫画アプリには大きく分けて出版系とIT系がある。出版系は出版社が自前のコンテンツを載せる。雑誌の感覚に近いアプリの一方、IT系は複数の出版社の漫画を配信する、いわば、「電子書店」型のサービスが主流。特にIT系のアプリはその規模感から、プラットフォームとしての側面がある。出版社から見れば収益の柱となる配信先でありながらアプリでは競合する存在である。
異なる性格を持つ両者だが、その戦略を比べると漫画アプリのトレンドが見えてくる。出版系の「少年ジャンププラス」とIT系の「LINEマンガ」の2つから、そのトレンドを紐解いてみる。
累計ダウンロード数は1500万、週刊アクティブユーザーは250万人という出版系ではトップクラスの規模を誇る少年ジャンププラス。少年ジャンププラス躍進の明解な理由の1つが、アプリオリジナルの作品への注力だ。その成功例の1つが、人気の「SPY×FAMILY」である。すでに累計発行部数は400万部に発行された。
「漫画アプリで大事なのはいかにオリジナル作品を打ち出していくか」
新作の供給によって読者が継続的に集まる場を作ることが狙いだ。さらに、アプリと少年ジャンプ雑誌を使い分けることで、新連載をアプリに投稿してチャレンジの場として活用されている。
国内でトップの利用者数を誇るが、現在ダウンロード数は2700万以上、配信作品数は43万点とその規模はプラットフォーマーとしての存在感を放つ。
ラインマンガが狙うのは国内にとどまらないグローバルプラットフォームのポジションだ。今年7月にLINE digital frontier は提携関係にある韓国NAVER WEBTOONとともに、米WEBToON Entertainmentの完全子会社となる資本変更を行なった。
マンガ市場は世界全体で広がっているが、LINEマンガは日本中心で世界でパフォーマンスを挙げられていない。韓国や米国の企業と資本提携をすることで、国内外でのナンバーワンを目指すという。グローバル化で見据えるのは独自コンテンツの強化である。その1つが「ウェブトゥーン」である。韓国発祥の縦読みフルカラーマンガだ。スマホと親和性が高いので、グローバルスタンダードである。
日本から海外へ、海外から日本や、文化交流のようなことを容易にできるのが、IT系ラインマンガの強みであると言える。
参照先:ダイヤモンド108巻32号 p52-p53