欧州連合(EU)は欧州の優秀な官僚たちが気候変動問題について壮大な計画を立てていることを世間に知らしめたいと考えている。
それを証明するためにEUは14日、規制と支出面の包括的計画を発表した。
この計画は畏怖と衝撃の戦略と呼べる。欧州委員会によれば「フィット・フォー・55」と呼ばれるこの気候変動対策パッケージの目標は2030年までにEUの二酸化炭素の排出量を1990年のレベルから少なくとも55%減らすというものだ。これが実現すれば、世界初のクライメットニュートラルの大陸とするための道筋が整うという。
EUが示した壮大な計画には膨大なページ数にわたる法改正と支出目標の提案が盛り込まれている。
問題になるのは計画の注意書きに細かく書き込まれている内容だ。大見出しで示された約束も実現にはかなり困難だ。EUは内燃機関で動く新車の販売を35年までに禁止するとともに、航空業界をEUの排出量取引制度の枠組みに取り入れたいと考えている。低予算の休暇旅行を計画している人々の幸運を祈りたい。
しかし、なぜこれほどの非常識な提案がされるのか。一説には、EUは自らの気候変動対策に関する遠大な計画を声高に説明することで、すでに欧州産業の足かせになっているコストと同様のコストを米国企業に課す方向にバイデン大統領を追い込むことができると期待しているのかもしれない。
何れにしても、今秋スコットランドで開催予定の世界的な気候変動に関する会議に向けた前哨戦でさらに多くの巧妙な駆け引きが出てくるとみられる。
参照先: 週刊ダイヤモンド109号31巻 p19