[週刊ダイヤモンド] 108巻29号 要約と感想

PUBLISHED ON 2020-07-20 21:23:07 +0900 JST — DIAMOND

要約

伊藤忠が直面する3つの壁

 伊藤忠商事がコンビニエンスストア大手のファミリーマートに対しTOBを開始した。伊藤忠がファミマ株を買い付けに費やす費用は約5800億円に上る。伊藤忠はファミマ株を既に50.1%を取得し、連結子会社としている。それに加えて、全株式を追加取得する狙いはファミマの非上場化にある。

 伊藤忠はファミマを非上場化した後、全農と農中に対し、ファミマ株の約5%を譲渡することで身内で戦略仲間を固めるつもりである。つまり、ファミマ株を買うことで、少数の株主の意見を聞かないようにしたいのが伊藤忠商事の真の目的なのである。    さらに、ファミマの増益してる利益を取り込めるのも利点である。今期のファミマの純利益予想は600億円だった。この利益を毎回の決算で上積みできれば、トップの三菱商事の追撃ができる。

伊藤忠商事を阻む3つの壁

 これらの戦略は理想論にすぎず、構想を実現するには3つの壁があるという。

① ファミマを非上場できるのかという点

 まず、焦点になるのは買い付け価格だ。伊藤忠はファミマに対し、1株2300円で買い付け要求をした。その後、コロナによる株相場の下落により、買い付け要求を1株2000円まで下げた。これに対し、ファミマは提案に納得できず、交渉が難航した。ここ最近、ファミマ株株価が急騰したことで、このままTOBをしても保有してる株式を株主が手放すのは難しく、TOB の不発の可能性が考えられる。

スクイーズアウト : 支配株主が少数株主の同意を得ることなく、すべての株式を取得できる方法

② ファミマの企業価値を向上できるのかの疑問

 次に、ファミマに対し、伊藤忠は付加価値をつけることができるのかの疑問である。商材を買うコンビニと商材を売る商社は相反する関係である。経営を一体化しても商材を売りつける商社に従うのでは上手くいかない恐れがある。というのも、伊藤忠はファミマを、三菱商事はローソンを傘下に置いているが、コンビニ業界の一番はセブンイレブン・ジャパンである。これは商社との関係性に因果関係があるのかもしれない。

 伊藤忠はリアル店舗や物流に強みがあるが、消費者の生活に浸透したITプラットフォーマーには遠く及ばない。コンビニ利用者のデータ収集からのスタートなので、上手く付加価値をつけることができるのかが疑問である。

  ③ ファミマの海外展開の限界

 ファミマの海外展開が難しいという見解がある。というのも、人口減少して潜在的なマーケットの大きさには限界がある。そのため、事業拡大にはどうしても海外進出が必須となる。そこでネックになるのが中国事業である。実はファミマは中国に04年に進出をしている。そのファミマが合弁相手に選んだのが台湾食品大手の頂新である。中国の店舗網は順調に拡大したが、頂新側がライセンス料を払わないなどのトラブルがあり、関係が悪化している。伊藤忠は中国ビジネスを得意としているので、その点でファミマに付加価値を与えることで、別の形で再参入をできると思われるが、依然としてこの関係を解消しないままでは、進出は難しいと思われる。

参照先:ダイヤモンド108巻29号 p8-p9  

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