脱炭素ブームで二酸化炭素の排出量が少ないLNGの争奪戦が世界で繰り広げられ、価格が高騰している。LNG価格高騰の震源地は日本から遥か遠くに離れた欧州である。
LNGのアジアスポット価格の指標であるJKMが上昇している。
JKMは3/1に5.57ドル/MMBtuを記録し、その後上昇傾向に入った。6月には10ドル台を突破し、7/1時点で14ドルを超えた。
この現象は、電力会社が被害を被るかもしれない。というのも電力会社が顧客に販売する電力を仕入れる「日本卸電力取引所」(JPEX)のスポット価格が100円を超えたため、逆ザヤになり一日数千万のキャッシュが溶かした経験があるからだ。
今回、この夏に起きるかもしれない猛暑に加えて火力発電所の休止廃止によって7-9月にかけて電力需給が逼迫すると予想されている。足元では、LNG争奪戦が世界各地で繰り広げられて価格が高騰している。
電力不足とLNG争奪戦が重なれば、過去の急騰のような現象が起こるかもしれない。それにしてもなぜ夏本番を前にLNGが高騰しているのだろうか。
その原因は、高騰の震源地とされる欧州にある。
LNG価格高騰の発端となっているのは、EUのカーボンプライス(CP)だ。CPは二酸化炭素など温室効果ガスの排出量に企業が対価を支払うものである。温室効果ガスの排出量が多くなるとその企業にとってコスト増になるため、CPは温室効果ガスの排出量抑制に効果があるとされる。
このEUのCPが今年に入ってから上昇しているのだ。CPの上昇を受けて、特に火力発電所を保有する欧州のエネルギー企業などはCO2排出量が多い石炭や石油からCO2排出量が少ない天然ガスへと燃料転換を進めた。これにより天然ガス需要が高まった。
日本はLNG市場では主導権を握ってきた。しかし、脱炭素ブームで日本優位の潮目が変わりつつある。LNGは脱炭素社会へ移行する間のトランジションエネルギーと位置付けられている。 LNG価格が高止まりすれば、日本の電気料金に跳ね返ってくる可能性が高い。
そして、最大の脅威である中国の存在である。今年に入って日本を上回るペースでLNGを輸入している、脱炭素社会への移行期間において日本が主導権を握ってきたLNG市場では外野に振り回されることが予想される。
参照先: 週刊ダイヤモンド109号29巻 p12