日本銀行は3月の金融政策決定会合で株式の指数連動型上場投資信託購入額の柔軟化を発表すると思われる。しかし、同政策の出口政策は全く見えてこないのだ。
日銀がETFの購入を決めたのは2020年秋だが、その金融政策決定会合の議事録が先日公表された。今のような大規模な購入で株価を押し上げようとする相場操縦を狙ったものではなく、小規模な買い入れ学ではあるが、投資家達に日本のETF市場に目を向けさせるための呼び水効果を意図する政策であった。
しかし、現日本では日銀がインフレ目標達成を名目に株式を買い入れている中央銀行となっている。そのような状態に陥ってしまった時の出口政策が必要となるが、その鍵は香港の中銀であるHKMAにある。
1998年夏にヘッジファンドらは香港ドルと同国の株式指数先物を同時に売る「ダブルプレイ」を大規模に仕掛けることで香港ドル渡米ドルの為替レートを保つペッグ制を壊そうとした。これに対し、HKMAは為替市場や株式指数先物市場だけではなく、現物の株式市場でも介入を実施した。
ただし株式の買い入れは10日のみとなった。
防衛策としては成功したが、株式を大量買いしたことで多くの企業の大株主となってしまった。そこで、保有株式でETF「ラッカーファンド」を組成し、IPOの形で個人投資家に割安で売却した。ただし、購入した人がすぐに売却すればレートは下がってしまう恐れがある。そこで、継続保有することを促す「ロイヤルティーボーナス」というインセンティブを採用した。一年間保有したら割安で提供し、もう一年継続保有したら割安で提供するという仕組みである。
結果としてはうまくいったものの、その背景は2つあると考える。
①HKMAが株式を購入した時は市場が大混乱の最中で株価が大幅なアンダーバリューであったのでディスカウントして売却することが可能であった。
②香港の経済成長を見込む投資家が多かったので、2年を過ぎてもETFを売る投資家はあまりいなかったという点。
つまり、日銀がETF購入の出口政策を考えるときには、まず株価上昇を煽るような買い方をやめなければならない。やめなければ、株価上昇により企業価値以上のバリューの株をディスカウントして売りさばくことになるからだ。
また、日本が今後成長すると見込めるような構造改革が推進される環境も必要となる。
参照先: 週刊ダイヤモンド109号7巻 p23