コロナ変異株の出現で目先の不透明性は引き続き高いが、ワクチン普及後には欧米でミニ消費ブームが起きる可能性が高まっている。
感染収束とその後の人々の行動の正常化のペースは不確実性が大きい。ただ、長く続く制約から解き放たれた時に。その気になれば使えるお金が家計にたまっていることは確かである。
米国の家計貯蓄は昨年3月から年末までに1.6兆ドルも積み上がった。ロックダウンや外出自粛でお金を使いたくても使えず、貯蓄率が跳ね上がったことが主因である。また、所得の現象に苦しんだ人も多かった一方、さほど減らなかった家計も相応にあり大盤振る舞いの財政支援も寄与している。
所得階層別に貯蓄の動きを見ると、1.6兆ドルの大半は所得上位20%の家計が貯めたもので逆に上位40%より下の低中所得層では貯蓄は0.8兆ドルも減少した。
コロナ禍が格差を拡大させたことは明らかである。被害が大きい対面型サービス業は総じて所得が低いし、リモートで対応できる仕事は給与が高い傾向がある。金持ちの消費は不要不急で高額のサービスへの支出が多いが、所得が低い家計では食料などの支出を減らしにくい生活必需品のシェアが大きい。金持ちだけが潤っても消費全体への影響は限られるように思える。
一方、貯蓄が減った低所得層にも財政支援が来る。消費性向の高い低所得層への大規模な所得移転は限界的な効果が大きく、ミニ消費ブームをさらに押し上げる。
このブームは一時的反動という面が強く、コロナ後の成長ペースは中期的には緩やかなものに止まると見ている。こうした短期的な回復の勢いに動揺して金利や為替でボラティリティーが上昇するだろう。
参照先: 週刊ダイヤモンド109号9巻 p24