[週刊ダイヤモンド] 108巻43号 要約と感想

PUBLISHED ON 2020-11-06 13:44:22 +0900 JST — DIAMOND

要約

日立建機の売却理由

 日立製作所が日立建機を売却する方針を固めた。保有する約51%の持分を売却する方針である。

 日立建機の売却はリーマンショックが起こった2008年度、7873億円の巨額赤字に沈んだ日立製作所が行ってきた構造改革の総仕上げと言える。デジタル化によるソリューション事業に経営資源を集中させる日立は景気の影響を受けやすい非中核事業を手放してきた。とりわけ09年度に22社合った上場子会社は本業とのシナジーが少ない事業が多く利益相反の関係が懸念されたので、親子上場の解消を求められた。20年度は日立化成の全保有株式を昭和電工に売却し、医療分野に強みのある日立ハイテクノロジーズは逆に完全子会社化にするなど親子上場の解消をしてきた。

 残る上場子会社は、日立建機と日立金属である。本業とのシナジーが少ない日立金属は売却の方向性が見えていたが、日立建機は競合する中国メーカーの追い上げで収益性が落ちているものの、日立にサポートできる技術があることから、売却か完全子会社化を決める判断が注目されている。

 結果的に日立は現在保有する株式の約25%分を売却すると決定した。しかし、25%も保有する理由は2つある。

  1つ目は、煮立ちのIOTプラットフォームの「ルワーダ」と親和性があるということである。すでに日立建機のルマーダ関連の売上高は1974億円に登り、前年比で10%成長している。

 2つ目の理由は。日立建機が日立ブランドを使い続けられるようにするためである。日立建機は売上高の8割を海外で稼ぐグローバル企業である。世界シェアでいうと。建設機械では世界第3位に位置するが、中国の三一重工など中国メーカーにより中国市場でこれまで通り稼ぐことが難しくなった。そうした中で日立のブランドの活用が不可欠になる。

 日立にとっての一部売却という方針は、ボラティリティの高い製造業から手をひき、デジタル産業に力を入れる従来の方針に沿ったものである。景気変動に影響されやすい建設機会事業のリスクを減らせる一方で、建設現場や鉱山といったルマーダの活用フィールドは確保できるからだ。  

 

参照先: 週刊ダイヤモンド108号42巻 p10-11

TAGS: ECONOMY
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